水野晴郎超特急

 映画評論家の故・水野晴郎さんが原作・脚本・監督・制作し自ら主演、一部音楽まで手がけた「シベリア超特急」という映画をご存知でしょうか。世間的な評価はボロボロにも関わらず、一部のコアなファンに「シベ超」の愛称で根強く支持され続けているのでずっと気になっていたのですが、やっと見ました。一応、殺人事件が起こるサスペンスです。
 シベリア超特急6作品ある中で、1、2作品目を見たのですが、まず、水野晴郎さんご本人の、セリフの棒読み加減が半端ありません。滑舌も悪く、「えっ、今なんて?」の連続です。どんどんテレビのボリュームが大きくなっていきます。また、水野さんの「映画を作りたい!」という熱意に応え、立派な俳優の方々がたくさん出演されているのですが、どんなに重厚な大物俳優の演技も、この映画でだけは、見ているこちらが照れてしまうような違和感と恥ずかしさがあるというのは一体どういうわけでしょう。そして、水野さんが「この映画はいいな!」「自分の作品でもやりたいな!」と思ったものを、本当にあれもこれもやってみたのであろう、もりもりすぎる詰め込み感と茶番感。ラストに至っては、よく、どんでん返しというのは良い意味で使いますが、これは2転3転どころか4転5転した印象で、終わりそうでなかなか終わらず、あげくのはてに、最終的にはシベリア超特急の中でうたた寝していた水野さんが起きて「ああ、夢だった」と初志貫徹の棒読みで全部夢だったことを宣言してしまうという、ええっ今まで観ていた私の2時間は!?と、最後までつっこみどころが満載の映画です。もう水野晴郎さんが真面目すぎて、映画愛がありすぎて、普通の映画とは同列に語れない自由なアート作品に仕上がっています。そしてこれらの自作を、「いやあ、映画はエンターテインメントでないといけないと思うんですよね」と本当にニコニコと嬉しそうに、満面の笑みで語る水野晴郎さんを見ていると、人間のさわやかさここに極まれりと、何か教えられた気分になります。私はとても気に入って、続きの4作品もまとめて借りたのですが、続きも届くと伝えたときの家族のがっかりした顔が忘れられません。

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